仮想待合室を使い始めてからコンバージョン率が上がったという企業が増えています。一体なぜでしょうか?ここではその5つの理由を解説しながら、仮想待合室を使って売上向上につなげるためのヒントをご紹介します。
仮想待合室といえば、アクセス集中時にサイトを保護するためのソリューション。しかし、利用開始した企業からは、サイトの保護はもちろんのこと、それ以外にも売上面で予想外のメリットがあったという声が続出しています。
いくつか実際に企業から寄せられた感想を見てみましょう。
- 「初回の発売時に比べて(Queue-itを導入した)再販時は売上が2倍になりました」 - Hills Field (日本のキャンプブランド)
- 「コンバージョン率が大幅に向上しました」—Winkelstraat (オランダのファッションマーケットプレイス)
- 「待合室導入後のコンバージョン率はほぼ100%です」— Stauning Whisky (デンマークのウィスキーブランド)
- 「CVRが著しく上昇し、売上増加につながりました」 - G2カスタマーレビュー
このように、待合室を導入した企業の多くが、コンバージョン率の向上を経験しています。
なぜ、待合室という一見売上効果とは関係なさそうなソリューションが、コンバージョン率の改善につながるのでしょうか。その理由は、どうやら私たちの意思決定の過程に深く関係しているようです。この記事ではその主な5つの要素を紐解いていきます。
私たちの意思決定プロセスには、社会的証明が大きく影響します。つまり、多くの場合、私たちは他人がすることを基に自分の行動を決めるということです。
例えば、満席のレストランの方がそうでないレストランよりも魅力的に感じたり、話題の映画や人気のテレビ番組を見たくなるのは、この最たる例と言えます。多くの企業がウェブサイト上で評価点数や取引企業数などを公表するのも、この心理を利用したものです。
人は、ものごとを決断するとき、それが正しい選択であるかどうかを気にしています。人気度は商品やサービスの良さを表すため、その目安としてよく使われるのです。
話を待合室に戻しましょう。待合室は、需要の高い商品発売やセール時に使われるソリューションで、言ってみれば人気の度合いを示しています。
「行列ができる〇〇」というような文言もありますが、多くの人が並んででも欲しいものというのは、質が良いものや、お得なものばかり。実際、複数の研究で、人は「列があると、何の目的かわからなくても並びたくなる」ことが実証されています。
Queue-itを利用するHills Fieldの取締役、水野大志氏はこのように語ります。
「待合室には何人待っているか表示する機能があるため、人気度を可視化できます。学校で人気者がどんどん人気者になるのと同様、これがあることでブランド力を向上できると思います。」
Hills Field 取締役 水野大志氏
多くの人がほしがっているものだからこそ、尚更ほしい。目当てのものが手に入ると、満足感が高まる。待合室には、こうした心理を増幅する効果があるのです。
私たちの行動はまた、過去に行った意思決定にも大きく影響されます。つまり、過去の行動に従って一貫した行動をとり続ける傾向にあるということです。
さらにこの傾向は、お金や労力、時間を費やした物事に対してより高まります(コンコルド効果)。映画や小説がいまいちだと思っても、なかなか途中でやめられないのはこのためです。
これを待合室で待機中のユーザーに置き換えると以下の通りになります。予想待機時間が10分だった場合、入室後5分待った人ならば、さらにもう5分待たなければ、これまでの待ち時間が無駄になってしまう。そのような心理が働き、数分待たなければいけない場合でも、最後まで待つ人が多いのです。
そして、いよいよ目的のサイトに案内されました。10分間待ったユーザーにとって、ここで何も買わずにサイトを出るほどもったいないことはありません。また、せっかく待ったからには、他のアイテムもついでに購入したくなるかもしれません。(まとめ買い効果については後ほど解説します。)
実際、ある研究では、待った時間が長い顧客ほど、実際に買う確率が高いと実証されています。意外だと思う方もいるかもしれませんが、待つという行為は、顧客の購入欲を高めるのです。
「数が限られていること」という意味の希少性。限定品であればあるほど価値が上がるというメカニズムを利用して、多くのブランドがマーケティング戦略に取り入れています。
希少性の高い商品は、競争率も高くなります。そして、競争率は購買欲を高める上で大きな要因であると言われており、実際に「人はある商品を目当てに競争しているとき、一番購買欲が高まる」という研究結果も発表されています。
この心理を利用して、「数量限定」「期間限定」「大人気」といった文言を待合室に表示することで、人気度と競争率の両方をアピールし、購買欲向上につなげることができます。
または、待合室のオプション機能「リアルタイムメッセージ」を使って最新の在庫情報や売切れた商品の情報を表示することもお勧めです。このように見せ方を工夫することで、「自分が買わなければ誰かが買ってしまう」という競争心を高め、購買意欲をあおることができます。
ほとんどの場合、待合室にいる人は特定の商品を目当てにサイトにアクセスしています。そうした人たちに「他の商品も気になる」と思わせるための機能が待合室には備わっています。
例えば、スーパーでレジに並んでいる際、目の前に美味しそうなお菓子や、気の利いた雑貨があると買いたくなる。マクドナルドのレジに並んでいる時、新商品がハイライトされていると、もともとのオーダーに加えて買ってしまう。こうした経験はないでしょうか?
これをオンラインでも再現するために、待合室のデザインはカスタマイズ可能になっています。例えば、ロンドンの人気美術館、テート・モダンは、待合室からブティックページに誘導することで、ついで買いを促進しています。
「待合室にクーポンコード付きでオンラインショップへのリンクを貼っています。お客様に特別な体験を届けられる上、売上向上にもつながるので、重宝しています。」
テート・モダン シニアコマーシャルシステムマネジャー
また、Hills Fieldの場合、人気アイテム販売で待合室を導入したところ、保護対象の商品の売上が3倍に上がりました.
待合室はカスタマイズ可能なので、目的に応じてブランディングやプロモーションに待合室画面を使うことができます。テート・モダンのようにオンラインショップへ導線を貼る以外にも、このような手法が挙げられます。
- 映画の予告編を流す
- プロモーションコードを提供する
- デジタルカタログやメニューを表示する
- プレイリストをリンクし音楽を再生できるようにする
- 優待プログラムやニュースレターに登録するためのメールフォームを用意する
- SNSアカウントへのリンクを貼る
待合室にいる人は、既にブランドロイヤリティが高いユーザーです。こうした見込み顧客が集まる場を最大限活用できれば、売上を伸ばすことができます。
ウェブサイトの読み込みにかかる時間によってもコンバージョンは左右されます。読み込み時間が1秒のサイトは、読み込み時間が4秒のサイトよりも4.5倍コンバージョン率が高いとされています。
通常、サイトへのアクセスが急増するとサイトの読み込み速度が著しく低下します。さらにはサーバーにも影響を及ぼし、最悪の場合サーバーがダウンしてしまい、サイト自体に入れない時間が何時間も続くといった事態も起こりえます。
「読み込み時間が長いとコンバージョン率が下がるなら、ユーザーを待たせるのも同じなのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、ここで重要なのは、待合室があることで、本来ならば障害が起きてしまう場面でサイトを保護でき、稼働させ続けられるということです。
さらにもう一つ肝心なのは、顧客が離脱するかどうかは、待つという行為、そして待ち時間ではなく、待っている間どのように感じるか(どのように待たせるか)のほうが、影響が大きいということです。(待ちの心理学研究結果より)
サイトにアクセス障害が起こった場合、ボタンを連打しても、ページを更新しても入れない。その結果、後からアクセスした人の方が先に購入できてしまうなど、ユーザー体験は良いとは言えません。
一方で待合室の場合、待ち時間を有意義に過ごせる仕組みが用意されています。また、待っている間にできることの例として、このようなものが挙げられます。
- プロモーションでワクワク感を増幅させる
- 進行状況をプログレスバーで示す
- 待機時間の長さと推定アクセス時刻を表示する
- なぜ待合室を用意しているのかを待合室上で説明できる
- 先着順の案内とボット対策によって、公平な購入プロセスを提供する