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【解説】仮想待合室とは?全ての疑問にお答え

Green marbles toppling over on one side and lining up orderly on the other

仮想待合室は、TicketmasterからThe North Face、東京都庁まで、世界中のトップブランドが利用するトラフィック管理ソリューションです。様々な販売・申請場面で使われているため、「知らず知らずのうちに利用していた」という方も多いかもしれません。このガイドでは、仮想待合室とは何か、どのような仕組みなのか、なぜ大手企業や官公庁が仮想待合室を導入しているのか、といった疑問にお答えします。

仮想待合室とは?

目当ての商品をECサイトで買おうとしたり、行政サービスに申請しようとした際に、以下のような画面が表示された経験はないでしょうか?

Virtual waiting room page with key features highlighted

これが仮想待合室です。仮想待合室とは、オンライントラフィックを管理するためのクラウドベース型ソリューション。限定商品の発売やセール、人気のチケット販売、政府のデジタル行政サービスなど、需要が高まる場面でサイトやアプリの障害を防ぎ、安定した運用とスムーズで公平なユーザー体験を実現します。

ユーザーは、カスタマイズされた待合室で待つこともできますし、順番が来たらメール通知を受け取るよう設定することも可能です。そして順番が来ると、目的のページに遷移します。

 

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仮想待合室は、例えばこのような場面で使われています。

仮想待合室の目的は?

では、なぜ仮想待合室が必要なのでしょうか?それは、リアル店舗が一度に多くの人を収容できないのと同じように、ウェブサイトにも対応できるトラフィックに限りがあるからです。

例えば、タイムセール時のリアル店舗を思い浮かべてください。人数制限をしないと、リアル店舗に人が溢れかえってしまい、混雑して動けない、商品の取り合いが起こる、十分なカスタマーサービスができない、補充するのにも一苦労…といった問題が起こりえます。

これは、ウェブサイトでも同様のこと。サイトやアプリに過負荷がかかると、このような問題が考えられます。

  • サーバーに過負荷がかかり、速度低下やクラッシュを引き起こす
  • データベースに圧迫がかかり、在庫エラーや過剰販売が起こる
  • 決済ゲートウェイなどのサードパーティサービスに障害が発生し、チェックアウト時にエラーが出る
  • 検索機能やレコメンデーションエンジンがクラッシュする
  • 悪性ボットが本物の顧客よりも先に商品を奪い取る

仮想待合室は、サイトやアプリにアクセスする人の数を管理することでシステムのパフォーマンスを保証し、オンライン体験を向上させることができます。(具体的なメリットは後ほど紹介します。)

仮想待合室の仕組みとは?

仮想待合室は、ビジターが保護対象のアクションを実行した場合(ランディングページの訪問やチェックアウト)、またはトラフィックが設定した閾値を超えた場合に稼働します。

サイトから待合室へリダイレクトされたビジターには、待ち番号や予想待ち時間、その他運用側が表示したいカスタマイズコンテンツが表示されます。そして順番が来ると、自動的に目的のページに遷移。待合室で並んだビジターにはQueueトークンが発行されるため、サイトに戻ったビジターは制限なく閲覧できるようになります。

How do virtual waiting rooms work illustration

ビジターが遷移する先のサーバーは仮想待合室プロバイダー側のため、ビジターが待合室にいる間、保護対象のサイトのサーバーには負荷がかかりません。(待合室のURLは保護対象のサイトに合わせてカスタマイズ可能です。)

通常、仮想待合室プロバイダーは、大容量のサーバーを構えつつ、軽量なページでビジターを効率的に管理する仕組みになっています。例えばQueue-itは、スケーラブルなAWSサーバーにホストされており、リージョンに応じて世界各地のデータセンターを活用しているため、大規模なイベントにも安定した対応が可能です。 (2023年には1日に平均1億人以上を、過去10年間では合計750億人以上のビジターを処理。)

では、仮想待合室はどのような場面で利用できるのでしょうか。Queue-itでは、主に①時刻の決められたスケジュール型イベント、②突発的なトラフィック発生時、そして③会員対象の限定・先行販売に対応しており、ニーズに応じて設定することが可能です。

スケジュール型待合室

最も一般的な利用場面が、開始時間が決められたスケジュール型イベント(限定商品販売やコンサートのチケット販売、デジタルサービス提供など)です。

こうしたイベントでは、開始前からアクセスが集まりやすい傾向にあります。そこで便利なのが仮想待合室のプレキュー機能。プレキューとは、販売開始前にビジターに表示されるカウントダウンページで、時刻より前にアクセスしたビジターは全員このページ上で待機します。

開始時刻になると、同ページにいる全てのビジターにランダムな順番が割り当てられ、待合室に案内されます。それ以降にアクセスしたビジターはその後に続いて先着順に並び、順番に案内されるという仕組みです。

Infographic showing pre-queue, followed by randomization, followed by FIFO queue

以下は待合室をスケジュール型イベントで使った場合のイメージです。

  1. 開始前にアクセスしたビジターはカウントダウンページで待機
  2. 販売時刻になるとビジターは待合室ページへ遷移
  3. 順番が来たら目的のサイトへリダイレクト

 

 

スケジュール型イベントで待合室をうまく取り入れている一例がブラジルのチケット販売会社Ingresso。以下のグラフは、世界最大規模の音楽フェスRock in Rioのチケット販売時のトラフィックデータです。

Ingresso pre-queue traffic spike

チケット販売開始時刻は19時。ですが、緑グラフ(分間ビジター流入量)を見ると、午後5時45分頃からすでにビジターが集まり始め、プレキューページにリダイレクトされているのがわかります。販売時刻が来ると、これらのビジターの順番はランダム化され待合室に遷移し、そこからIngressoが設定した最大流出量(赤グラフ)に従って自社サイトに案内されます。(赤グラフが右肩上がりなのは、オンセール中、Ingressoがインフラの許容量を確かめながら待合室からサイトへの流出量を徐々に増加したため)

「Queue-itのおかげで、安定してトラフィックを流出できるようになり、アクセス急増でサイトがダウンしていた頃に比べてはるかに多くのチケットを販売することができるようになりました。」

技術部長 ロベルト・ホセ氏

Roberto Jose, Ingresso

セーフティネット:24時間365日のビジターピーク保護

仮想待合室は、予期せぬトラフィック急増が発生した時に備えてセーフティネットとしても使用できます。この場合、企業や組織はあらかじめシステムの許容量に基づいた閾値を設定し、トラフィックがその量に達した場合にのみ待合室が起動します。

ビジターは先着順で待合室に並び、順番が来るとサイトに案内されます。トラフィックが閾値以下に戻ると、待合室が非表示になり、サイトは通常運転に戻ります。

予想外のトラフィックが発生するのは、ニュースに取り上げられた時、有名人やインフルエンサーに紹介された時、ソーシャルメディアで注目度が急上昇した時などさまざま。ビジターピーク保護は、過負荷からサイトを四六時中保護する機能のため、Queue-itのお客様からはしばしば「保険」と呼ばれます。

Queue-itをセーフティネットとして利用している一例が、イギリスの内務省。オンラインパスポート申請サービスに突発的なトラフィックが発生するとのことで、Queue-itを使って申請サイトの安定したパフォーマンスを実現しています。

「一時的なピークのために、大幅にスケーリングできるインフラに投資するのは意味がありません。Queue-itがあれば、サイトが常に保護されているという確証がある上、トラフィック制御が簡単にできるため、とても費用対効果が高いと思います。」

プロダクトマネージャー ケヴィン・ルイス氏

Home Office logo

会員対象の限定・先行販売

会員対象の限定・先行販売で便利なのが招待制待合室。ユニークIDなどで認証されたユーザーのみがアクセスできる待合室で、会員限定イベントをボットや非会員による不正行為から保護するほか、優待サービスをインセンティブに会員登録を促すこともできます。

会員限定の販売実施時や、会員と非会員向けにそれぞれ異なる開始時間が設けられている販売イベント時に利用可能です。

設定方法は至って簡単です。

  1. 招待制販売・申請の対象となる顧客を見極め、顧客リストをアップロード
  2. メールや会員ページでユニークリンクを送信するか、もしくは待合室ページにEメール認証フィールドを追加
  3. 招待制販売開始、Queue-it管理画面からトラフィック流量を管理し、快適な顧客体験を提供

 

Bedre Nætter(ベドレ・ネッター)では、ブラックフライデーセール実施時に、会員向けの先行開始時間(20時)と一般顧客向けの開始時間(深夜)の二枠を用意。サイト全体を待合室で保護し、プレキューページ上で「会員登録して4時間早く販売に参加」を促すCTAを表示したところ、このページにアクセスしたユーザー中25%がVIP会員に新規登録しました。

「招待制待合室を通過したユーザーはコンバージョン率が高く、開始11分間でその日の売上目標を、3時間でその週全体の売上目標を達成することができました。」

Eコマース&パフォーマンス責任者、マーカス・フォルスバーグ氏

MARCUS FORSBERG, HEAD OF ECOMMERCE & PERFORMANCE

待合室と比較したオートスケールのデメリットとは?

「容量の問題なら、サーバー増強すればいいのでは」と思う方もいるかもしれません。確かに、オートスケールは便利な一面もありますが、運用の妨げとなる以下のようなリスクを伴います。

  1. 高額なコスト:サーバーはランニングコストが高く、年に数回しかないトラフィックピークのためにサーバーを増強するとコストの無駄が生じます。
  2. 時間差:通常、オートスケールには多少ですが時間がかかります。そのため、トラフィックの急増に対して即座に反応できず、障害が起きてしまうことも多々あります。
  3. ボトルネックのリスク:データベース、在庫管理システム、決済ゲートウェイなどのサードパーティ機能、動的検索やおすすめ機能など、ボトルネックになりやすい部分はオートスケールではカバーしきれないため、どんなにサーバーを増強したとしても過負荷の問題を防ぎきれません。

このように、オートスケールだけでは、運用効率が悪い上に、システムの障害のリスクを防ぐことができません。

ここで、楽天フランスが全国ニュースに取り上げられた時の例を見てみましょう。報道直後にトラフィックが急増し、1分間に約6,000ものアクセス(同社インフラが通常許容できる量の5倍)が殺到しました。

Chart showing two massive traffic spikes for Rakuten France

楽天フランスのインフラ担当であるティボー・シモンド氏は、このような大きなトラフィックの急増に対して、「対応に1分かかってしまうソリューションでは遅すぎる」と言います。そのため、オートスケールは選択肢から除外しました。

また、前もってスケーリングしておくことも検討しましたが、こうしたメディア報道は正確なタイミングが把握できない上、アクセス量も予想できないため、適切なレベルの増強が難しかったと言います。また、検証テストや最適化、システムの再構築やサードパーティシステムのアップグレードなど、運用コストもかさむと見込んだとのこと。

様々な選択肢を検討した後、楽天チームはQueue-itの仮想待合室を採用しました。その理由として、ティボー氏は「トラフィックの動きに瞬時に反応するため、サイトのパフォーマンスに影響が出ないこと」、そして「ほんの数分間のピークのために高額なリソースを費やす必要がなく、時間とコストの節約になること」を挙げます。

その結果、ティボー氏は「どんなキャンペーンやPR活動にも落ち着いて対応できるようになった」「心から安心できるようになった」と語ります。

Queue-itが2023年に顧客対象に行った調査では、Queue-itを導入したことでサーバーのスケーリングコストが平均37%削減されたという結果が出ています。

仮想待合室ソフトウェアのメリットとは?

1. ユーザーに寄り添ったデザインでUX向上

「ユーザーが必要な時にシステムが機能すること」は、UXの最低限のレベル。仮想待合室は、過負荷時にスムーズなシステム運用を実現してこれを保守します。さらに、ユーザーが安心して、スムーズに、そして楽しく待てるように、以下のような機能も備えています。

  • 先着順の案内や具体的な待ち情報の提供
  • 順番が来たユーザー対象にEメール通知を送信する機能
  • 異なるデバイス間で待ち位置を共有する機能動画、ゲーム、プレイリストなどのコンテンツ挿入
  • ブランドイメージを反映したり、販売対象商品の紹介ページとしても活用可能

このように、ユーザーに寄り添ったデザインである待合室。実際、上記の顧客調査では、84%がユーザー体験の向上につながったと回答、85%がより公平な販売を行えるようになったと回答しました。

「実際私も待合室をユーザーとして使ったことがあるのですが、顧客体験をいかに良くするかに目をつけ、追求しているソリューションだと感じました。Peachが目指すべき次の顧客体験ってこういうことなのかなと。これまでの一方的なコミュニケーションだったSorry Pageに比べて、お客様からの満足度を大幅に改善できそうだと思い、コンタクトしました。」

Peach Aviation株式会社 イノベーション本部本部長 村上篤実氏

Peach

2. 悪性ボット・不正行為の阻止で公平な販売を実現

競争率が高い販売や申請場面は、ボット攻撃がつきもの。対策が不十分だと、事業を妨げる様々な問題をもたらします。

  • 過負荷によるサイトダウンや在庫エラー
  • 既存顧客とのつながり・ロイヤルティ低下
  • ブランドイメージの損失
  • パートナー企業との関係性悪化
  • 運用コスト・サポートコストの増加
  • データの歪曲、正確な分析の阻止

仮想待合室は、購入経路上でトラフィックを管理し、通過させても良いユーザーかどうかを判断するチェックを行います。言ってみれば、空港の保安検査場のようなものです。

Queue-itでできるボット対策には、以下のようなものがあります。

  • データセンターのブロック
  • プルーフ・オブ・ワーク・チャレンジ
  • CAPTCHAテスト
  • レピュテーション・スコアに基づくトラフィックのブロックまたはチャレンジ
  • 異常なトラフィック挙動に基づくブロックまたはチャレンジ
  • トラフィックのランダム化・ライブ抽選機能
  • 招待制のアクセス管理

Queue-it顧客のTicketmasterは、これまでに待合室を17,000以上のイベントで利用し、130億以上のボットを阻止したと報告しています。このように、仮想待合室があれば、トラフィックの量だけではなく、質もコントロールできる点も、待合室の大きな利点です。

3. 安定したシステム運用を実現し負担を軽減

新商品発売やコラボ商品発売、キャンペーン実施時など、アクセス集中が見込まれる時期は、ビジネスにとって失敗できない正念場。

Queue-it顧客の多くが、いかなる負荷にも耐えられるソリューションであること、管理画面が直感的で使いやすいこと、ビジターピーク保護機能があることなどから、「圧倒的に安心してシステム運用できるようになった」と言います。実際、上記の顧客調査では、76%が販売・登録実施時のストレス減少につながったと回答、85%が販売効率の向上につながったと回答しています。

また、誤って閾値以上のビジターを入れてしまったり、予期せぬボトルネックが見つかった場合でも、焦る必要はありません。その場合、流出量を下げたり待合室を一時停止したりして、一旦サイトへのリダイレクト量を調整し、問題解決に努めましょう。(メッセージ機能を使って待合室中のユーザーに事情を説明することをお勧めします。) この間、ユーザーは待合室に留まり、自分の順番を保持し続けます。

「待合室のおかげで心から安心できるようになりました。確実にトラフィック管理ができる上に、変更が必要な場合はAPIやダッシュボードですぐに行うことができるので助かります。」

楽天フランス インフラ担当 ティボー・シモンド氏

事例を読む

Thibaud Simond, Infrastructure Manager, Rakuten France

4. 顧客のエンゲージメント向上で販売促進

アクセス集中対策として知られる仮想待合室ですが、実は顧客とのエンゲージメントを高めるマーケティングツールとしても効果的です。

待合室は、購買意欲の高いユーザーが無数に通過するポイント。言ってみれば、ブランド側にとって、逃すのはもったいないマーケティングの機会です。例えばこのような活用方法が挙げられます。

 

  • クロスセル効果やクーポン提供でAOVアップ: 待合室にいる人を対象に関連商品の宣伝や割引クーポンを提供することで、平均注文額(AOV)の上昇を狙うことができます。例: ロンドンの人気現代美術館テート・モダンは、特別展のチケット販売時にQueue-itの待合室を使ってオンラインブティックの割引コードを提供しています。
  • ロイヤルティプログラム登録の促進: 招待制待合室と通常の待合室を組み合わせて使うことで、優待サービスをインセンティブに会員登録を促すことができます。例: Queue-itを利用中の某大手スニーカーブランドでは、会員限定の販売時に招待制待合室を導入。販売当日、「会員登録して限定販売に参加」を促すCTAをウェブサイトに追加したところ、2度にわたる販売で約48,000人の新規会員を獲得しました。
  • SNSのエンゲージメント強化: 待合室にはX(旧Twitter)、YouTubeやSpotifyなどのソーシャルメディア・コンテンツを埋め込むことができます。これによって、ユーザーが退屈するのを防ぎつつ、自社コンテンツのエンゲージメントを高めることができます。例: Queue-itを利用中のある企業が待合室にブランドビデオを挿入したところ、YouTubeビデオ再生回数が10万回を超えました。平均すると、待合室に並んだ4人に1人が閲覧したことになります。
  • インタラクティブな待合室でファーストパーティーデータ取得: 顧客の好みや要望、特定のサービスの利用状況といった情報を探るためのアンケートやクイズを挿入することで、将来の商品開発やマーケティング戦略に活かすデータを得ることができます。

まとめ

この記事では、仮想待合室とは何か、どのようなメリットがあるのかについて説明しました。以下、ポイントを整理します。

  • 仮想待合室とは、オンライントラフィックを管理しスムーズなシステム運用とユーザー体験を実現するクラウドベースソリューション
  • トラフィックをターゲットページから待合室にリダイレクトし、サイトが処理可能な速度でサイトに戻す仕組みである
  • スケジュール型、ビジターピーク保護型、招待制型の3種類があり、ニーズに応じて設定することが可能
  • 主なメリットは、顧客体験の改善、ボット対策、安定したシステム運用の実現、顧客エンゲージメントの向上が挙げられる
  • オートスケールと比較すると、コスト面、ボトルネック含め確実に保護ができる点において長けている

Queue-itは、172カ国、750億人以上のユーザーに待合室サービスを提供してきたマーケットリーダーです。Queue-itの利用方法についてさらに詳しく知りたい方は、お気軽に問い合わせください。

 

仮想待合室でスムーズ&公平な顧客体験を提供