スタイリッシュで一風変わったキャンプ用品を次々に打ち出し、アウトドア業界で旋風を巻き起こしているHILLS FIELD。質の良い商品と考え抜かれたマーケティング戦略でファンの心を掴んでいます。一方で、その人気のあまり商品発売の度に悩まされていたという同ブランド。どのようにQueue-itを使って人気販売を管理し、売上倍増に成功したのでしょうか。
ハチの巣模様の焚き火スタンドに、バイキングを彷彿とさせる角型の木造カップ、ブリーフケース付きのショットグラス。HILLS FIELDのオンラインストアには、思わずクリックしたくなるようなユニークな商品が揃っています。
もともとはアウトドア関連のメディア事業を軸に創業した同社。アウトドア好きの心を揺さぶるコンテンツをブログやSNSで発信し続け、フォロワー数は右肩上がりに増加しました。同社YouTubeチャンネル「伊豆のぬし釣り」の登録者数は、なんと約50万を誇ります。
好調だったメディア事業に引き続き、同社はその後グッズ販売に着手。物販関連を指揮する同社取締役の水野大志氏はその理由をこう語ります。
「キャンプって、正直何をしたらいいかわからない人が結構います。従来のアウトドア商品も、機能性重視の単一なデザインが多い。そんな中、HILLS FIELDでは、新しいアウトドアの楽しみ方を提供したいという思いでキャンプ製品の販売を開始しました。」
この言葉通り、HILLS FIELDが手掛ける商品は、質の高さ、ユーモア、機能性、おしゃれさを併せ持つ、「一味違う」キャンプ用品ばかりです。もともとのメディア事業で既にファンベースがあったこと、プロモーションに長けていたことなどが功を奏し、同社の商品はまたたくまに注目を集めました。今では、新商品発売時には４万人以上がオンラインストアに集まることもあります。
HILLS FIELDの商品例
この急速な成長の陰で同社を悩ませていたのが、アクセス集中によるシステム障害です。商品発売や再販のたびにサイトがダウンしてしまい、顧客からの問合せが殺到する状況が相次いでいたと言います。今回は、同社がどのようにこの課題に取り組み、顧客体験と売上を改善したのかを水野氏に伺いました。
多くのEコマース同様、HILLS FIELDではLINEのプッシュ通知を使って販売情報の発信やプロモーションを行っています。多くの人に素早くリーチできるという利点がある反面、通知を送った直後にアクセスが急増し、システムが圧迫される状態が続いていました。「より強固なサーバーを求めてECソリューション提供会社を何件も渡り歩きましたが、結局サーバーダウンを繰り返していました。あるベンダーからは、発売時間を公表しないでほしいと要求されたりもしました」と水野氏は語ります。
アクセス集中の弊害が最も顕著に表れたのが、2023年3月に実施されたオリジナルパイントグラスの再販です。ブランドのマスコットであるお酒マン柄のビールグラスで、同社で最も人気のアイテムの一つです。
お酒マンのプリントを施したオリジナルパイントグラス
再販が開始すると、ウェブサイトへのアクセスが一瞬にして急増。システムダウンを引き起こし、何時間もサイトにアクセスできない状態が続きました。
「買えない、サイトに繋がらないという問合せがインスタグラムのDM(ダイレクトメッセージ)や電話で殺到して、その対応に追われました。また売り上げについても予想額の半分程度しか達成せず、アクセス障害が原因で機会を損失しているという確信がありました」と水野氏は言います。
数か月後に予定されていた同商品の再販で同様の事態を防ぐため、より一層解決策探しに奮闘する日々が続きました。
そんな中、ある人気テーマパークのチケット購入時、仮想待合室に案内されたという水野氏。
「待合室を見た瞬間、『これだ！』と思いました。URLを確認したら、Queue-itという名が含まれていたので、これが提供会社かなと。検索してみると日本語でもサポート提供可能ということだったので、早速問い合わせました」と当時の状況を語ります。
「我々はスタートアップ企業なので価格には敏感です。ですが、ダウンタイムの防止が優先課題だったこと、そしてQueue-itの待合室がこれまで求めていたソリューションそのものだったので、効果を試さないのはもったいないと思いました。」
日本語でのサポートが充実していたこと、またJavaScriptで実装できたことで、導入までの流れはかなりスムーズだったと言います。
「ビジネス面でも技術面でもサポート体制がしっかりしていたので大変助かりました。以前海外の企業と仕事をした際に受けたサービスが悪かったので、今回も同様のレベルを覚悟したうえで問い合わせたのですが、Queue-itのスタッフはとても丁寧で驚きました。」
パイントグラス再販当日。開始時刻から数分以内でサイトに分間400を超えるアクセスが殺到しました。しかし、販売ページが待合室で保護されていたため、システム障害も苦情もなく商品を売り切ることができたと言います。
「パイントグラスの売上は前回より倍増しました。その上苦情もまったくなく、『ストレスなく買えた』といったポジティブな感想をインスタのDMでたくさんいただきました。」
Hills Field 取締役 水野大志氏
さらに、その効果は意外なところでも見られたと水野氏は言います。
「待合室には何人待っているか表示する機能があるため、人気度を可視化できます。学校で人気者がどんどん人気者になるのと同様、これがあることでブランド力を向上できると思います。また、サイトがダウンせずユーザーがきちんと回遊できたことで合わせ買いもたくさん見られ、グラス再販中の『その他』の商品の売上も３倍近くになりました。」
HILLS FIELDの待合室のデザイン
「最初は費用面で少し躊躇していたのですが、導入後は抜群の費用対効果だったと実感しています。売り上げも上がり、顧客からの支持も得ることができ、結果的にとても良い投資でした。」
スタイリッシュなキャンプスタイルを提供し、アウトドア業界に新風を吹き込んだHILLS FIELD。現在はリーチを広げるための戦略転換に取り組んでいると言います。
「これまでは高価格帯の商品を取り扱っていましたが、より多くの人に選んでもらえるようにミドルの価格にも挑戦していこうと考えています。これによってウェブサイトへのトラフィックはさらに増えると思いますが、積極的に待合室を活用すればスムーズに販売できると確信しています。」と水野氏は言います。
方針転換後も、ビジョンは妥協しないという水野氏。最後にこう語りました。「我々の仕事はインフルエンサーのようなもので、売ろうと思えば何でも売れてしまいます。ですが、これからもブランドの原動力である『キャンプライフを楽しくする質の良い商品を作りたい』という思いを引き続き大事にし続けていきたい。ビジネス拡大にあたって、これを心がけながら突き進んでいきます。」